今年7月、10日間に亘ってチベットへ出かけた。我々の旅は花と自然を求め人のいない場所を訪れる事を心掛けているが、今回印象的だったのは“チベット人とチベット仏教の”強い結びつき、信仰心だった。その象徴であるポタラ宮は1994年世界遺産に登録された宮殿式建築群。チベット族の古建築の精華と言っていい。 因みに紅宮の壁は4500m級の山に自生するbaimaという植物の茎を束ねているそうだ。 “ポタラ”とは“観音菩薩が住まう地”の意で観音菩薩とはその化身とされるダライ・ラマを意味している。 白宮と紅宮分れ当時ダライ・ラマは宗教と政治の両方の最高権力者であり、政治部門は白宮で宗教部門は紅宮で執り行っていた。 紅宮には歴代のダライ・ラマのミイラを納めた霊廟があり、霊塔には数多くの黄金と宝石が使われ実に煌びやかである。 近年観光客が激増し一日の入場者数が制限されている。毎朝マニ車(経文を入れた筒)を回しながらポタラを周回する大勢の地元民を見かける。 大昭寺(ジョカン)は聖地ラサのそのまた中心にある。 チベット全土から、他に四川、青海省、内蒙古から何千、何万の巡礼者が集まってくる。寺の前では多くの巡礼が“五体投地(地面にうつ伏せになり身体を伸ばすチベット仏教の独特の祈り)”を繰り返している。 この五体投地は寺院で日常的に行われるが、一年近い年月を費やして一般道を五体投地を繰り返しながらラサを目指す家族連れにも遭遇した。 正に命がけである。また大昭寺の本殿の中が一つの巡礼路になっており、巡礼者は時計回りに巡礼を繰り返す。 本殿のあらゆる仏像が極彩色に彩られ息を呑む美しさの一方、灯明に使うバタ−(ヤクの乳)の入った魔法瓶を片手に持ち、 整然と、物静かに順番を待つチベット人の穏やかさは対照的だ。 現実に目を向けるとチベット人が住む広大な地域を中国政府が支配するという事実がある。かってダライ・ラマが政治、宗教を治めた独立国家は歴史の波にのまれ変貌著しい。 |