江戸歴史散歩
高橋 あかね (44 文)

 江戸歴史散歩の会は今回が2回目、古今の歴史と地理に通暁する最上君がガイド役となって、両国から清澄まで江戸情緒のほのかに残る下町界隈を散策した。
 両国駅西口に集合した一行は総勢で17名。まず駅前の国技館と大江戸博物館の前で大相撲の歴史、国技館の成り立ち、などを滔々と語る最上君の講釈に耳を傾けた。
その後ゾロゾロと連れだって足を向けたのは隅田川の土手、当日は木枯らし一号の到来で、川面を吹き渡る風は冷たかったが、ほのかに汐の香が漂い、かもめの舞う大川を眺めていると思いは「名にし負はばいざこととわむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと・・・と在原業平が歌を詠んだ平安時代の昔にいざなわれる。
 土手をおりてから、回向院、吉良上野介邸、勝海舟生誕の地、芥川龍之介居住地、小林一茶旧居跡、芭蕉記念館等などを巡ったが、その一つ一つについて流れるような口跡で説明する最上君の博覧強記には、一同ただただ感服するのみ。
 芥川龍之介居住地跡には「杜子春」の一節が刻まれた石碑が両国小学校の一隅に建っている。おりしも両国小学校では創立130周年という垂れ幕が校舎にかかっていた。それを見た久津君は「我が母校麻布小学校も今年が創立130周年を迎え、同窓会長として近く祝賀会を催すことになっている。こんなところで創立年度が同じ小学校に巡り合うとは奇縁だ」と驚き感嘆することしきりであった。
 やがてわれわれの足は萬年橋に向かう。江戸へ塩を運ぶためにできた小名木川に架かるこの橋こそ、藤沢周平「橋物語」の中の「約束」で、幸助がお蝶と「五年後の七つ半(冬場の午後5 時頃)に萬年橋で会おう」と約束した所。 下町のあちらこちらを巡り歩いた私達が萬年橋に到着したのはたそがれ時の4時半頃。 ちょうど幸助がお蝶の来るのをまだかまだかと息と詰めて橋上で待っていた七つ時頃。なんという奇しき偶然!と思ったのは素人の浅はかさで、周平ファンである最上君が仕組んだ心憎い演出であった。萬年橋上で撮影した写真を御覧くださいませ。まさに七つ時の夕暮れの斜光が私達一行の背後から柔らかな光をなげかけております。
 最後に訪れたのは清澄庭園。江戸時代に紀伊国屋文左衛門の邸があったと伝えられ、明治時代に岩崎弥太郎が賓客のために整備した庭園は広々としていて美しく、夕刻で閉園間近ということもあって、私達以外は殆んど人影もなく静かな佇まい、両国界隈にこんなに閑静で美しい日本庭園があることを知ったのは新鮮な驚きだった。優雅な庭園を静かに散策しながらその伝統美をじっくり味わった。江戸歴史散歩の終章は松平定信の墓のある霊厳寺近くの料理屋での夕食。半日を共に過した友人達と歓談しつつ味わった深川飯と熱燗の味は最高でした。(以上高橋)

江戸(東京)歴史散歩の会」(仮称)は東京に僅かに埋もれた江戸の情緒を求めて散策する会です。当分は分科会とせず会員を中心にどなたでも参加できる会にしたいと考えています。次回は春の早慶戦レガッタを見ながら隅田川沿いに散策の予定です。
どうぞ、どなたでもお気軽にご参加ください。  (最上 徹追記)

listに戻る