尺八
 山本雄一(周山) (昭38経)
 僕は、和楽器の一つである尺八を38年やっている。よく”なぜ尺八”と聞かれるが、特に動機があったわけではない。
 勤め先の近くに大手町産経学園があり、そのパンフレットを見ていたら、僕の、アメリカの会社に勤めているので何か日本的なものという気持ち、音痴だからあまり人のやらない、比較されないもの、出張が多いのでどこにでも簡単に持っていけるもの、そんな思いに合致したのが尺八だった。週一回勤務後、習いにいったわけだが、なかなか音が出ずずいぶん苦労した。ただ、仕事とぜんぜん関係のない分野に打ち込むのも気分転換になり、また仕事と違う仲間とお付き合いできたことも長続きできた秘訣と思う。
 
 僕の所属する苔山派尺八楽会では、第1回演奏会を1975年10月1日に行い、今年9月16日に第32回を行うが、仕事の関係で欠演した第2回、3回を除いて全部出演している。中でも思い出に残るのは、20回を記念してアメリカのジョージア大学で演奏会を開いたことで、たまたま我々の先生のお嬢さんが、同大音楽部ピアノ科卒業演奏があるというので、それを聴くとともに、その翌日我々の演奏会を行った。演奏会はスタンデイングオーベイションを受け大成功だったが、音楽部教授が”日本人の音楽を専攻している学生がこれまでこんな音楽は聴いたことがないと私に話しており、世界中の伝統音楽を犠牲にしてヨーロッパ式の音楽が流行してきたとするならそれは本当に残念なことです”という言葉が印象に残っている。 
 現在では、杉並三曲協会、三鷹市邦楽連盟、西東京市三曲協会に加盟し、春秋の演奏会に時間の許す限り出演している。
 一般に、尺八の音は、竹林を風がサーっと吹きぬける感じの音といわれているが、とにかく尺八は自分の吐く息を直接楽器にぶつけ、アゴを上げ下げして音程を調節したり、息の量をコントロールしながら竹の内と外に息を吹き込みよい音色を出そうとしたり、自分の身体と一体になって音を出していくため、そのときの健康状態がそのまま反映される楽器なので、気が抜けない。いつまでたっても上手にならないが、腹式呼吸は健康にもよいというし、細かく指を動かしているとボケ防止にもなるというのを頼りにがんばっている昨今である。
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