たっこ
吉田 素紀 (S48 工)

私は7年前に沖縄の石垣島で「たっこ」という愛称で呼ばれている女性と、ある偶然から知り合いになりました。彼女は石垣市街の住宅地で喫茶店をやっています。彼女と知り合ってから私は石垣に行くとまずその喫茶店に顔をだすようになりました。店は彼女の明るさと面倒見の良さから常連達でいつもにぎわっています。オリオンビールを飲みながら彼女の話を聞いていると「沖縄に来たー!」という実感が湧いてきます。そうして店の常連さん達とも親しくなる頃には、一緒にビーチパーティや島のイベントなどにも誘われるようになりました。
 
彼女は石垣島生まれの那覇育ち。高校卒業後は名古屋の編機メーカーに就職をしましたが数年で那覇に帰ってきました。那覇で基地の仕事をしているうちに知り合ったアメリカ人と結婚し米国に渡りました。米国で子供を二人もうけましたが離婚し子供を連れて石垣島に戻り、自宅の1階で喫茶店をはじめたという経歴の持ち主です。
 
常連達や友達同士のいざこざなども彼女が仕切ると誰も文句を言いません。「それはお前が悪い、まず○○に謝れ。」その彼女の一言で、言われた島の人は急に素直になり相手に謝ります。また、市役所の杓子定規な対応に切れて、彼女が役所の机の上に飛び乗り大暴れしたという語り草も残っています。彼女から聞く、真面目な名古屋人とちょっとルーズなウチナンチュー(沖縄の人)とのすれ違いの話や日本人は誰も住んでいない米国の田舎暮らしの思い出話は、ちょっぴり切なく最後は声をあげて笑ってしまうほど面白い話ばかりです。
 
今年も私は石垣島へ着くと最初に彼女のところに立ち寄ります。彼女は今、港と竹富島が見える丘の上の墓に眠っています。静かな墓の前で手を合わせると今でも彼女の明るい笑い声が聞こえてくるようです。

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