芸術の秋だ、オペラを観よう |
長野 八郎(S37法) |
私のクラシック音楽との出会いは、高校生の頃家にあった父のSPコレクションで、当初はベートーベンの「運命」やシューベルトの「未完成」等の交響曲を聴いて感動したのを覚えている。LP時代になると興味の中心は徐々に協奏曲、室内楽、歌曲に移り、最終的にはオペラに取りつかれてしまった。だがその頃オペラは上演頻度が少なく、チケットは高価、またDVDのような映像メディアがなかったため、まだまだ遠い存在であったように思う。当時、生のオペラというと二期会か藤原歌劇団の日本人によるオペラか、あるいはNHKが主にイタリアより招聘した歌手陣とN響による「NHKイタリアオペラ」(1956〜1976)のみであった。私の場合、1960年代中頃のニューヨーク在住中にメトロポリタンオペラで超一流の上演に頻繁に接することができたのは誠に幸運であった。時代は大きく変わり、現在オペラは身近なものになったので、是非多くの方にこのすばらしい芸術に親しんでもらいたいと思う。では具体的にはどこで何を観たらよいのか、チケット購入はどうしたらよいのか、事前の勉強は必要か、等について簡単に述べよう。
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前述の2つの国内歌劇団のほか、今は外来の引越公演も多く、例えば10〜12月だけでもベルリン国立歌劇場、プラハ国立歌劇場、ドレスデン国立歌劇場、レニングラード国立オペラ等、目白押しであるが、これらはチケットが高く、初めてオペラを観る方には少し抵抗があるかもしれない。一方、10月に開館10周年を迎える渋谷区初台の新国立劇場では、レベルが高くわかりやすい演出のオペラを格安で観られるのだ。同劇場は新芸術監督に指揮者の若杉弘氏を迎え、10月より来年6月にかけオペラの代表作といえるワーグナーの「タンホイザー」、モーツァルトの「フィガロの結婚」、ビゼーの「カルメン」、ヴェルディの「アイーダ」、「椿姫」等を上演する。チケット価格は演目により多少異なるが、B席で1万〜1万2千円、C席で6〜7千円程度である。チケットはかなり以前より買わなくてはならないので面倒だ、ということもあるだろう。確かに上演日の3、4ヶ月前に発売になり、安くてよい席はすぐ売り切れになる。しかしここであきらめることはない。良い方法をお教えしよう。劇場側は枚数は少ないが当日券を必ず用意しており、上演当日の朝10時より「チケットぴあ」の発券機のある店(ファミリーマート、サンクス等)で購入できるのだ。ただしD席のみで座席指定はできない。なんと価格は通常\3,150か\4,200である。席は4階の天井桟敷であるが、舞台からの距離は30メートル程度と遠くなく、音響も大変良い。なお、コンビニでチケットを買う場合、公演ごとにPコードというものがあるのであらかじめ調べておくとスムーズである。
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オペラに行く前にはあらすじを読んでおくとより楽しめるが、もしその機会がなかった場合、劇場ロビーにあるステージノートという小冊子(無料)記載の簡単な筋書きを読んでおくと良い。なお、上演中は日本語の字幕があるのでわかりやすい。オペラの定番が並ぶ新国立劇場の今シーズンは特にお勧めである。この秋は総合芸術であるオペラを存分に楽しんでいただきたい。私もビジネス・コンサルタントの仕事かたわら、オペラと高校時代より始めたフルートに日頃の充実感を見いだしている。
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