白馬岳山行記
加々爪 勝治(S34法)
私の山歩き歴はかれこれ16年になる。平成4年3月に奥多摩の高水三山に登ったのが最初で、その年の8月には南アルプスの3,000m峰塩見岳に登頂、自然の奥深さに感動を覚え山の魅力にとりつかれてしまった。この稿では私の北アルプスへの初見参であった白馬岳山行の模様を当時の登山日記をもとに綴ってみることにする。
 
大雪渓の登りとパノラマ大展望
白馬岳(標高2,932m)は後立山連峰北部の盟主であり、南に連なる杓子( しゃくし)岳、(やり) ケ岳を含めて白馬三山と呼ばれている。念願の白馬岳山行(三山縦走)は、会社のN先輩と二人で平成5年7月26日から3泊4日の日程で実行した。
第1日目は夜行列車を避けて白馬尻で1泊し、翌朝6時大雪渓の登りにかかる。この雪渓は剣沢、針の木沢と並んで日本三大雪渓の一つに数えられている。アイゼンを付けての雪渓登りは思いのほか容易で気分も爽快。案内書どおりの2時間で崩れかかった岩室のある 葱平(ねぶかびら)に着く。ここからは砂礫の道と変わる。かなりの急坂だが左右のお花畑で咲き乱れる高山植物に慰められながら登って行く。大雪渓の歩きだしから5時間半を要し午前11時30分白馬岳山頂に到着。われわれを歓迎してくれるかのように、360度さえぎるものなしの大パノラマが待ち受けていた。まず西北遥か彼方に富山湾と能登半島そして黒部川が望まれる。南の方を見ると遠くに鹿島槍ヶ岳、五竜岳などの後立山連峰、杓子岳に重なるように槍ヶ岳、穂高岳が見え、右に目を移すと立山、剣岳、毛勝三山が見える・・・。初めて眺める北アルプスの雄大な景観に時の経つのも忘れて見とれていた。
風雨の中 杓子、鑓ケ岳を縦走
第2日は山頂大展望を心ゆくまで楽しんでから頂上直下の白馬山荘に宿泊。第3日は6時15分に山荘を出発してまず杓子岳に向かう。昨日の好天とは一転して断続的に降る雨、稜線の強風と悪天候に見舞われた。杓子へはトラバース道もあるが敢えて山頂への急登を行く。強風が幸いしてか山頂では素晴らしい展望が得られた。鑓ヶ岳もピークを通過し同様に雄大な展望を堪能。鑓温泉分岐から左へ急斜面をジグザグに下り大出原(おいでっぱら)のお花畑に出る。さらに急斜面の樹林の道や鎖場を慎重に下ると鑓温泉小屋に着く。午前11時20分。標高2,100mの高所に湧く天然温泉の露天風呂に、縦走してきて疲れた身体を沈めると何とも言えず良い心持。遥かに火打、妙高、高妻、戸隠などの山並を眺めながらしばし至福の時を過ごした。
 御来光を仰ぎ猿倉へ下る
翌朝4時過ぎに起きて露天風呂に入る。妙高山と高妻山の間から朝日が昇ったのは4時50分。温泉に浸りながら御来光を仰ぐことができ最高の幸せ気分。まさに登山者にのみ与えられた神の恵みである。山の天気は日替わりで今日は快晴となった。小屋を6時に発って猿倉に向かう。途中4か所雪渓を横切る個所があり、小屋の人から落石に注意するように云われていたので慎重を期した。小日向のコルまで来てホッとひと息つく。見上げる斜面に一面のキンポウゲが印象的であった。猿倉に着くと9時37分発白馬行のバスが発車間際で、急いで乗車する。車中でのどをうるおした缶ビールが実にうまかった。 (了)
 

back    このページのTOP