アブダビを訪ねて
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松野幸子(S42 文)
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私は、長女が2年前からアブダビに住んでいることもあって、今年のお正月に当地を訪れてまいりました。アブダビはイスラム教の国、アラブ首長国連邦(UAE)の首都です。39年前にアブダビ、ドバイをはじめとする7つの首長国が連邦制で建国しました。
UAEは日本にはかけがえのない重要な貿易パートナーで、日本の石油輸入量の約23%はUAEからのもので、石油輸入量ではサウジアラビアに続き第2番手の輸入先です。
ここは片側6車線もある高速道路がまっすぐに伸び、見たこともない斬新なデザインのビルが林立する近未来都市でした。石油国家からの脱却の手始めに、アブダビは観光にも力を入れています。そのシンボルとなるのが98年から着工され、未だ建設途中のグランドモスクです。UAE建国の父シェイクザイードが眠るこのモスクは、世界で3番目の大きさで、4万人を収容することができます。総工費550億円。真っ白なモスクはイタリアからの白い大理石ですべて作られ、壁には様々な色の天然石や半貴石のはめ込み細工で、花々が生き生きと描かれています。更に、9000人が一度に礼拝できる一番大きな礼拝堂に敷き詰められたペルシャ絨毯は世界最大で、イランの女性1200人が2年の歳月をかけて織り上げた傑作です。
さて、そのアブダビ一の観光スポットのグランドモスクの拝観料ですが、なんと、タダ!無料です。女性は拝観の際にアバヤという黒いマントを借り、全身の肌を覆い、頭には黒いスカーフをかぶって髪を隠さなければなりません。
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グランドモスク |
モスク内 |
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次に訪れたのが、アブダビの誇りと言われる七つ星エミレーツパレスホテルです。このホテルの総面積は85万㎡、東京ドーム約18個分の広さです。広く一般に開放されていて、アブダビに住む人々の生活の一部になっています。一歩内に足を踏み入れると、眩いばかりのゴールドの装飾で、世界でここにしかない純金の自動販売機!まで設置してあります。
このホテル内では毎年、アブダビクラシックのシーズンには、世界の名だたる演奏家が大挙するそうです。ウィーンフィルやNYフィルをはじめ、去年は日本からピアニストの辻井伸行さんが訪れ、UAEの人々、在住の外国人たちも魅了したそうです。ここでひと際私の心に印象深く残ったのが、開発が急ピッチで進む、サディアット島の展示室です。
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エミレーツパレスのロビー |
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ルーブル美術館アブダビ別館完成予想図
パフォーミングアーツセンター |
サディヤット島は、アブダビから500m沖の島で、世界の文化芸術の総本山となるための様々な施設が建設中です。世界の芸術をこの国に結集させて、世界の文化発信地となろうと言うのがUAE的発想です。ここでも、巨万の富とヴィジョンがあってこそ、世界の芸術を発展させる舞台を提供できるのです。
この島では、パリのルーブル美術館アブダビ別館 、現代アートのグーゲンハイム美術館分館、バレエやオペラなどの無形文化財の舞台となるパフォ ーミングアーツセンターなどの建設が急ピッチで進められています。更に、島の中心にはUAEの国鳥ファルコン(鷹)の羽を模ったシェイクザイード国立博物館 、安藤忠雄さんの建築による海洋博物館なども建設中で、2018年の完成予定に人々の期待が膨らみます。エミレーツパレスの展示室には、これらの建築物の完成図と細かい模型が展示され、訪れる人々にアブダビの街づくりのヴィジョンをリアルに伝えてくれます。
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砂漠とラクダの国の見事な変貌ぶりに力強い国作りを実感した旅でした。 |