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杉並の風
      
60歳から始まった趣味
 
                                                林  靜(S45年 経)
 
 私は今、日本の歴史にとても興味を持っています。そして植物がとても好きです。この二つは60歳前後から目覚めたものです。ちょっとしたことがきっかけで新しい趣味が二つ増えました。
 
私は60歳から66歳の直前までの5年余りを京都で単身赴任生活を送りました。まさかこの年で単身……と思いながら赴任した最初の休日には京都植物園に出かけましたが、いつの間にかガイドブックを片手にお寺や神社を巡る自分がそこにいました。そう、京都のお寺はとても綺麗なのです。天龍寺など臨済宗の大きなお寺の山門や伽藍、そして手入れの行き届いた庭園。
まさに人間の創り出した耽美の世界がそこには広がっていました。  

 
 

 写真A
 (写真A) 浄土真宗西本願寺の国宝飛雲閣、聚楽第から移築されたという美しい楼閣です。
 
 
写真B
 
京都生活3年目位からは奈良に行き始めました。ここには東大寺・法隆寺始め1000年を優に超える建物がどっしりと今も息づいているのです。そしてその中には幾多の戦禍を乗り越え歴史を見続けてきた仏像達が素晴らしい表情をして私を迎えてくれていました。山の辺の道や飛鳥・斑鳩の里を歩き、大小様々な古墳を眺めると、そこには古代のロマンが幻のように浮かび上がってくるのです。 
 
 (写真B) 談山神社の木造十三重の塔、ここで
                中大兄皇子と中臣鎌足が蘇我入鹿暗殺計画を練りました。
 
私の古寺巡礼は、前日までにおよその行程を決め、建物や仏像など見るべきものをチェックします。当日はチェックしたものを見逃さないよう、また由緒書きや案内パンフレットをその場でしっかり読みながら見て回ります。
そして京都や奈良に関する本を読むのです。お寺・庭園・仏像・神社・古墳・歴史・文化等に関する解説書の他、小説をいっぱい読みました。古代から奈良時代にかけては黒岩重吾の歴史小説40数冊を夢中になって読みました。知らなかったことやおぼろげに知っていたことがいっぱい入ってきます。どんどん歴史を知ることの喜びが満ちてきてすっかり歴史のとりこになってしまいました。本を読む以外には京都・観光文化検定試験や奈良まほろばソムリエ検定試験などにも並行して挑戦しました。 
 
  写真C  
 (写真C) 京都・奈良検定試験の合格証・認定証
 
 2年余り前に東京に戻ってきてからも、本を読むのが楽しくて仕方ありません。主に皆さんが若いころから読んでこられた時代小説を遅ればせながら読んでいるのですが、60歳から目覚めた歴史へのあこがれが、今とても充実した時間を持てています。
 
    話は変わりますが、58歳の時に開腹手術をし、そのリハビリのために善福寺川緑地公園を歩くことによりはまってしまった樹木や雑草への関心もこの10年以内に始まった新しい趣味になりました。一日1万歩の散歩の中で毎日のように変化していく樹木や雑草の表情を見ている時も私の至福のひと時です。
                                                        

 写真D  
 (写真D) 巨木ユリノキの花、チューリップの花に似ています。
 
 “60歳から始まった趣味”はひょんなきっかけからのものですが、他の趣味と合わせこれからも忙しい毎日を楽しく過ごしていきたいと思っています。
 




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