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 北米旅行-西部劇と思い出-
  森下 尚 (S44工)
 
 青少年期に見たテレビや映画はその時代と共に懐かしく思い出されるが、最近のテレビ番組についていけない私には「ルート66」「ローハイド」「ララミー」「シェーン」などは特に懐かしく、初めてアメリカに憧れた人生上の切っ掛けの作品でもあった。今回その思い出に浸った、というのはアメリカ人の友人の西部への退職旅行に同行できたのである。日本でも多くのアメリカ番組が放送されていた頃の同世代人として思いが共通し、まず青春番組「ルート66」を偲びシカゴより出発することとなり、今は一部のみのルート66に代わり、ほぼ並行して走る列車にてアリゾナまで32時間揺られて西部入りした。
(写真1)はフラグスタッフ駅と駅前を走るルート66号である。大西部一泊目には66号線沿いのアランラッドの定宿で写真のかかる彼の部屋の隣に泊まることとなり、ジョイ少年のカムバックシェーンの声を思い出しながら一夜を過ごすことができた。
次に訪ねたモニュメンドバレーのジョンフォードポイント(写真2)はフラグスタッフよりレンタカーで北へ4時間の地にあり、西部劇の巨匠ジョンフォード監督がたびたび映画のシーンで使ったことで有名な観光スポットで、この丘に立つと疾走する駅馬車からジョンウェンが銃をかまえる「駅馬車」のシーンが自然に浮かんでくるのが不思議である。私が映画「駅馬車」を初めて見たのは昭和44年の春、早稲田に進学した高校の友人とであった。大学生活への切り替えに二人で慶早戦(彼にとっては早慶戦)に一緒に行く予定が雨で中止となり、替りに二人で観たのが「シェーン」と「駅馬車」であった。彼の顔が懐かしく思い出される一時であった。モニュメンドバレーから今度は南に車で約7時間行くと(勿論途中で泊まりながらではあるが)ツーソンの街に行けるが、途中に広がる大地には至る所にサグアロカクタスが生えており(写真3)、チャールスブロンソンやユルブリンナー等の七人のガンマンのシーンが高校の文化祭で観た「七人の侍」とも重なって思い出され、あの頃の甘酸っぱい想いをも思い出させてくれた。今回の最終目的地はさらに車で南に2時間、墓石という名の街ツームストンで、メキシコ国境に近くOK牧場の決闘で知られた街である。
倒されたビリークラントン他2名が眠るブートヒル(写真4)に立つとアープ兄弟、ドッグホリデイと共にワイアットアープを演じたヘンリーホンダ、バートランカスター、ケビンコスナー等の歴代のワイアットと共にヘンリーホンダ版の挿入曲、マイダーリン・クレメンタインが耳元に蘇り、それらの映画を見た頃の自分も浮かんできて、荒野の中でのちょっとセンチメンタルな旅の終りとなった。
 
 


 

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