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 “60の手習い「ドラムス」”―ある本との出会い  
 中村 民平 (S44工)

私が杉並三田会に入会した理由の一つが、フォーク・カントリーを演奏するバンド(のちに分科会シダーズ)を立ち上げたいので一緒にやらないかとの誘いでした。私の担当はドラムスですが、腕の方はまさに下手の横好き。ドラムスが杉並三田会との縁を取り持ってくれたわけです。私がドラムスを始めたのは60歳に近い頃。楽器演奏の未経験者が未知のものを始めるのは勇気がいるもの、加えて歳を重ねれば重ねるほどそのハードルは高く、「60の手習い」は古希をこえた今も悪戦苦闘中。
では、なぜ始めたのか。1冊の本との出会いでした。神戸への出張帰り、出張の楽しみは仕事を終え、帰りの新幹線での缶ビールと読書。その日、手にしていたのは新井満著「幸福論」。
著者は元電通社員で芥川賞受賞作家。映画10本の主人公を題材に幸福とは何かを問いかけるその切り口に新鮮さを感じ購入した本でハウツーものではありません。当時の私は、定年をまじかに控え、「食うには困らないだろうが、このままの生き方でいいのだろうか」という何か満たされぬものへの自問自答が心の中で渦巻いていました。そんな私の心を見透かしたように、著者は「自己実現が幸福となる大きなファクター」、すなわち『若い頃に自分は何をしたかったのか、夢は何だったのか、それをもう一度見つめなおし、ささやかな夢でもそれに挑戦し少しでも実現できればそれも幸福の一つではないか』と私に語りかけてくれました。『若い頃やりたくてもできなかったもの?』自問自答しました。様々なことが頭を巡りましたが、『そうだ! 学生の頃あこがれていたが、鼻から出来ないとあきらめていたドラムスに挑戦してみよう。今しかないぞ!』 
   思い立ったら止まらない。翌日、私は武蔵小金井にある宮地楽器店のドアを開け、ドラムス初心者レッスンの申し込みをしました。そこから苦難の道が始まりました。名ドラマー猪俣猛氏の主催する2泊3日のビギナー合宿に参加した時は大いに恥をかきました。その後、良い先生にも恵まれ、継続は力なりを信じて練習を重ねたおかげでバンドを組んで演奏する音楽の楽しさを知り、ビートルズの発祥の地であるリバプールや、ジャズの街ニューオリンズも訪ねました。世界観が広がりました。ドラムスのおかげです。
写真 ①   
 一流のプロの演奏を聴くたびに、天と地を感じますが、少しでも上達したいというささやかな夢の実現に向けて、晩年青年らしく“肩の力を抜いてマイペースで生涯学習を体現しよう”と思っています。
『あこがれとあきらめの狭間を、ゆらゆらと揺れながらも夢を追い続けていく、いつまでもいつまでも、それが人生』(『幸福論より』) 
 
  写真 ② 
《追記》
写真①は我が家のドラ息子(ドラムセットは金のかかる息子と同じ様な物)
写真②は演奏風景(シダーズの写真にはいつも私は隠れていますので、もう一つのバンドです)
 


 

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