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杉並の風
        
 近田舎(ちかいなか)・秩父  
 遠藤 富士夫(S48 法)
以前スイスの金融機関に勤務していた際、スイス中部に位置するルツェルン湖を臨む、アニメ『ハイジ』に出てきそうな、同僚の持つ可愛い山小屋に案内されました。以来、いつかは緑の中でゆったりと過ごせる暮らしを夢見てきました。10年ほど前、マルチ・ハビテーションという言葉が流行っていました。都市部に住み、同時に田舎あるいは海外など複数の居住空間を行ったり来たりする暮らしです。マレーシア、ニュージーランド、カナダなどロングステイ候補地も訪ねました。結論としては、海外は各地への旅行で十分とし、東京をメインに、首都圏でベースとなるセカンドハウスが持てれば、年齢、往復時間、金銭的負担等から何とかやりくりできるかと考えました。候補地思案の末、杉並から車で1時間半ほどながらも、独自の文化が維持されている秩父を選択しました。

秩父は、地元で標ぼうする通り、『近い』わりに自然と独特の文化が残る『田舎』です。我が家は市街地の隣接しながら木々に囲まれ鳥のさえずりが聞こえるのんびりとした環境にあります。但し、キツツキ、鹿、狸、ハクビシン、もぐら、カメムシ、スズメバチなど多くの厄介者も森には生息しています。購入後しばらくした冬のある土曜日、真夜中3時過ぎ、天井に何かが落下したような物音に目が覚めました。何事かと軒下窓のカーテンを開けると窓越しにビー玉が横に二つ並び、その背後にはコートの襟につけるようなフワフワした毛皮がぶら下がっていました。びっくりして懐中電灯を手に取り照らしてみると、眼前にキラリと光る眼と猫のような顔、そして後ろに大きな尻尾。慌て驚いてのけ反ると、照らす光の先には動物が翼を広げ軽快に暗闇を飛行していくのが見えました。それ以前から、真夜中に何かが落下した物音を何度か体験していましたが、まさかのムササビ飛来と知る初めての直接対面でした。また、ある朝、食事中に大きな工事音と振動が続き、日曜の朝なのに近所で工事があるのか不思議に思い、家の外に出てみるとキツツキが軒下の柱を懸命に削っていました。しばらく唖然としていると、ようやく人の気配に気付き逃げていきました。その後の留守中の更なる被害に、小動物とスズメバチの侵入を防ぐためにも、あちこち露出している木部を金属でカバーするリフォームを余儀なくされました。改めて、自然の良さと同時に厳しさを学ばされています。

秩父市は人口約6万人ながら、盆地ゆえ地元の文化がしっかりと受け継がれ、お祭りが年間300以上あると言われています。ユネスコ文化遺産に登録され、祇園、高山に並び日本三大曳山祭の一つで12月初旬に開催される秩父夜祭、手造りのロケットを発射する龍勢まつり、素人歌舞伎などユニークなイベントも数多くあります。産物としては、寒暖差の激しさから糖度の高いさまざまな野菜とイチゴ、ぶどう、りんご、モモなどの果物、そば、豆腐、ホルモン、美味しい水と気候を活かした、日本酒(秩父錦、武甲政宗)、ワイン、ウイスキー(イチローズ・モルト)などなど食文化も多種多様です。地場野菜を地消するカフェ、レストランなど、東京とは一味違う魅力ある店も増えています。秩父には温泉が点在し、日帰り温泉も数多くあります。その他、秩父舞台のアニメ、パワースポット、GW頃に満開になる芝桜、三十四箇所札所巡りなど、様々なテーマでの旅行者も増えています。

秩父への感謝を込めて、ビジターを増やす機会を作っています。最近では当会一部読書会員が属する武蔵野川柳会の吟行として秩父を訪れていただきました。これからも、自身の楽しみのみならず、会員の皆様はじめ多くの方々に秩父の魅力を味わっていただければと願っています。

 


 

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