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 人生100年のロードマップは描けたか
木村 雄二 (S45年工)
 
 最近参加している某学協会のある委員会W.G.「シニアパワー活用」で, 100年時代の人生戦略が話題になっている。
 生まれ育った街日本橋人形町で中学校を卒業後,慶應義塾志木高校に入学し,工学部に進学後大学院修士・博士課程を経て研究者・教育者を目指してきた。27歳での学位取得後,東京農工大学(旧国立2期校)工学部助手を経て30歳台で工学院大学に着任し,以来30余年の時間を過ごし,同大学も卒業した。
 学位論文は,材料の信頼性に関するテーマを選択し,極値統計学に基づく理論的な解析とこれをサポートするための実験データとの突合せに腐心した。同テーマは,後に立命館大学のS先生とご一緒に編集幹事を担当した2冊の書籍に集約され,根底にある論理的な考え方は今でも新鮮であると自負している。
  大学教員時代の教え子は学部卒(一部は修士修了)350名余,+博士課程修了者数名を数え,Dr.修了者の一人は昨年上智大学の教授に昇格された。
 67歳で工学院大学教授を卒業後,非常勤講師も70歳で卒業し,現在は後任の准教授に企業との共同研究の受け皿をお願いし,私自身も客員研究員として共同研究に参加する卒論生の指導に当たっている。
 このような状況の中で,100年時代の人生戦略を問われ,自問する機会が多くなった。Lynda Gratton& Andrew Scott著のLife Shiftに書かれているように,教育・仕事・引退モデルは崩壊し,「無形資産(お金に換算できないもの):生産性資産(仕事に役立つスキルや知識など) ,活力資産(健康、友人,愛など),および変身資産(人生の途中で新ステージへの移行を成功させる意思と能力)」を大事にしながら,新しいシナリオ-可能性を広げること,新しいステージ-選択肢の多様化への対応,新しい時間の使い方-自分のリ・クリエーションの努力 が必要とされている。彼らはその中で大切なことは「時間の質(quality of time)」であると力説している。
 時代も平成から令和に移行し,私自身も第3ステージから今後の新たなステージを眺めつつある現在,大学の使命である,教育・研究・社会貢献の前の2者を一部残しながら,社会貢献と自己のLifeの充実を意識しつつ活動を継続している。
 著者らの強調する明るい未来を切り開くための3つのシフトの必要性を記述すると,以下のようになる。
1)広く浅い知識ではなく,専門的な知識を得ること。
多くの知識はウィキペディアやグーグルなどからますます手軽に得られるので,ひとつの分野だけでなく関連分野やほかの分野の専門知識を身につけることこそが未来の自分の付加価値になる。
2)ひとりひとりが競争するのではなく,協力し信頼しあえる人間関係を幅広く築き,共同作業によってイノベーションを起こす。
3)働いて稼いだ賃金の消費から幸福感を得るのではなく,働くことに情熱をかたむけ,そこから幸福感を得られるようにする。
 これらを意識的に行うことで,有意義な働き方/生き方が選択できそうなので,私もこれらを実践し人生100年の指針としたい。 


 

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