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杉並の風
 
 目指せ,日本一
水本 陽子(H20 法) 
 
 「一生に一度は富士登山」というバスツアー会社のキャッチコピーに心奪われ,思いもかけず富士登山に挑戦してしまいました。
ツアーは1泊2日。新宿駅からバスで5合目まで連れていってもらい,8合目の山小屋で1泊して山頂を目指すというツアーです。
1日30回のスクワットで体を鍛え,登山用具店のセミナーで登山の奥深さを学び,道具をそろえて,楽しみに当日を迎えました。
 当日。空は晴れ渡り,いかにも登山日和。しかし,台風が近づいているという不穏な予報も流れていました。
 5合目からしばらくは木が生えているところもあるのですが,やがて木陰は全くなくなり,直射日光が容赦なく照り付けてきます。すごく急な登り坂というわけではなく,そんなに疲れる気もしないので,もっと早く登ってもよいように感じましたが,ガイドさんいわく,徐々に高度を上げて体を慣らしていかないと,7合目や8合目あたりで体が追いつかなくなることがあるとのことでした。
 6合目と7合目の間で,雨が降ってきました。さっきまで暑くて仕方がなかったのに,雨が降ってきたためか,はたまた高度が上がったためか,まだ日は出ているのにずいぶんと涼しくなり,次第に寒いほどに。
 そして8合目の山小屋に着いたときには,雨も風もかなりの強さになっていました。
冷えて疲れた体に,山小屋での夕食のおいしかったこと!温かいカレーにスープに,ハンバーグまでいただいて,すっかり元気になりました。
問題は台風です。雨も風も,見るからに強まっており,これはきっと登頂は難しいだろうと思われましたが,夜の11時ころにガイドさんに最終判断をいただくこととし,とりあえず早く寝て体を休めましょうということになりました。
 山小屋は,広いスペースに寝袋で全員が雑魚寝するというイメージだったのですが,1人~3人ずつにスペースが区切られ,とても清潔で室内も温かく,驚くほどぐっすり休むことができました。

 さて,夜中の11時。やはり登頂は難しいとの判断で,翌朝4時ころまで山小屋で休んだ後,下山することとなりました。
 残念と言えば残念ですが,雨も風もみるからに激しく,この雨風の中で山頂を目指すのは正直怖いと感じていたところだったので,ほっとしました。
 午前5時少し前ころ,ふと雲が途切れて,思いがけず太陽が顔を出しました。暗かった世界が雲の隙間から一気に明るくなり,その光に自分たちが正面から照らされて,しばし言葉を失う神々しさでした。

 そんなわけで,登頂は果たせなかったものの,思い出深い富士登山となりました。
また機会があれば挑戦し,いつの日か,日本一の山の頂上に到達できたらと思います。
 



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